ローストビーフを作ろう

ローストビーフを作りたい!

低温調理でおいしいローストビーフが作れると聞いたので作ってみることにしました。

低温調理とは

低温調理法(真空調理法とも)とは、食材と調味液を真空パックしたものを比較的低温の一定温度の湯で長時間加熱するという調理法で、 フライパンで焼くよりもやわらかい仕上がりで肉を加熱調理することができる調理法です。

欠点

おいしい料理を作ることができる低温調理ですが、水温を長時間(30分~数時間)一定に保つ必要があり、人間がこれをするのはかなり面倒です。 そこで、水温を指定された温度に保つ機械が低温調理器と称して販売されています。

この記事では低温調理器でローストビーフを作る工程を書いています。

材料

まず以下の材料を用意します。

  • トランジスタ(2SC1815-Y) 2個
  • リレー(946H-1C-5D) 2個
  • コンデンサ(2200μF) 1個
  • 可変抵抗(5kΩ) 1個
  • 半固定抵抗(5kΩ) 1個
  • サーミスタ(103AT-11) 1個
  • ダイオード(1N4007) 1個
  • ツェナーダイオード(6.2V) 2個
  • モノラルジャックとプラグ 2組
  • XHコネクタ 3組
  • ACアダプター(12V)とそのジャック 1組
  • 各種抵抗、ケーブル等 適量
  • ブリックコンテナ 1個
  • M2ネジ、スペーサー等 適量
  • IHコンロ 1個
  • 牛もも肉 約300g
  • 塩胡椒 適量
  • みりん、醤油、酢、ウスターソース等 適量

低温調理器を作る

まず低温調理器を作ります。

低温調理器には加熱装置とそれを制御する部分があります。今回、加熱装置としてアイリスオーヤマのIHコンロを使います。

IHコンロを制御する

今回使ったIHコンロは電球等と違って、コンセントを抜き差ししても加熱をON/OFFすることはできず、加熱ボタンを押して加熱ON/OFFを切り替える必要があります。

今回使ったIHコンロの加熱ボタンはタクトスイッチだったので、スイッチの足から導線を引き出し、それらを通電させたりさせなかったりすることでボタンを押している状態と離している状態を作ることができます。 あとは制御装置で、適当な温度のときに引き出した導線を一瞬通電させた後に元に戻せばボタンを押したことになり、加熱ON/OFFを切り替えることができます。

早速スイッチの足から導線を引き出します。 コンロの裏側のネジを外し、蓋を開けるとIHコンロの制御基板にアクセスできます(この際ケーブルを切らないように注意する)。

IHコンロのスイッチの足から導線を引き出した様子

上の画像のように加熱ON/OFFボタンのタクトスイッチにケーブルをはんだ付けし、排気用の穴からケーブルを引き出します。 (画像ではマスキングテープで排気穴に固定しているが、ガムテープ等の粘着力の強いテープで固定しないと剥がれてきて排気ファンが動かなくなるので注意)

引き出したケーブルはモノラルケーブルで制御装置とつなぐので、引き出したケーブルにモノラルジャックをはんだ付けし、適当な場所に接着剤で貼り付けます。

制御装置を作る

次に温度によってIHコンロを制御する装置を作ります。

回路

回路図は以下のようになります。(実際には可変抵抗とサーミスタはXHコネクタで接続する)

制御装置の回路図

サーミスタは温度が上昇すると抵抗値が減少する特性があるので、これを利用してリレー1をON/OFFします。

サーミスタと可変抵抗(温度設定用)の抵抗値の和がある程度大きくなる(つまり温度がある程度下がる)とトランジスタのベースに十分な電流が流れ込み、 2個のトランジスタによってその電流が増幅され、リレー1がONになります。

リレー1がONになるとまずコンデンサが充電され、 その際流れる電流でリレー2がONします。コンデンサが十分充電されるとリレー2にはほとんど電流が流れなくなり、再びOFFになります。

リレー2はモノラルケーブルによってIHコンロの加熱スイッチとつながっているので、 リレー2が一瞬ONした後OFFになるとIHコンロは加熱ボタンが押されたと判断し、加熱を切り替えます。

逆に温度がある程度上がるとトランジスタのベースに流れ込む電流が減少し、リレー1がOFFします。 リレー1がOFFするとコンデンサが放電し、この際にリレー2がONになりますが、十分放電すると再びOFFになります。

このようにして温度が下がるとIHコンロをONし、下がるとOFFすることができます。

また、トランジスタのコレクタからベース側に51kΩの抵抗がついていますが、これは適切なヒステリシス幅を持たせるためにつけています。 リレーはOFF→ONに必要な電圧(今回は3.75V)とON→OFFになる電圧(今回は0.5V)に大きい差があり、トランジスタ1個で増幅するとリレーがONになる温度とOFFになる温度に大きな差ができてしまい、低温調理器として使えません。 そこでトランジスタを2個にして増幅率を稼いでいるわけですが、今度は増幅率が高すぎて閾値付近でリレーが高速でON/OFFを繰り返すようになってしまいました。

そこで51kΩの抵抗をつけることで、適切なヒステリシス幅を持たせています。 トランジスタのベース電流が大きくなると、リレー1と抵抗による電圧降下でコレクタの電位は小さくなり、51kΩの抵抗からベースに流れ込む電流も減少するため、ベース電流の増加を緩めることができます。 ベース電流が小さくなるときも同様に、ベース電流の変化を緩める働きをします。

組み立て

基板をEagleで設計し、発注します(Fusion PCBを利用)。二週間弱で届きました。

発注した基板の写真 発注した基板

部品を実装します。

部品の実装が完了した様子

ケースにはダイソーのブリックコンテナを使います。ピンバイスとステップドリルでケースに穴をあけ、ネジとスペーサーで基板を固定します。

可変抵抗とモノラルジャック、適当に用意した温度設定用の目盛りをケースに取り付け、制御装置は完成です。

完成した制御装置 制御装置。伸びているのはサーミスタで、電源とモノラルジャックは右の面にある。

動作確認

できた低温調理器がちゃんと動くのかどうか確認してみましょう。

IHコンロに電源をつなぎ、水が入った鍋をのせ、モノラルジャックで制御装置とつなぎ、サーミスタを鍋に入れ、制御装置の電源をつなぎます。

だいたい60℃に温度を設定し、10分間温度の推移を温度計で計ると次のグラフのようになっていました。

温度推移のグラフ 60℃に設定し、60℃に達してから10分間の温度推移のグラフ。(30秒おきに温度を測定)

グラフから分かるように、±0.7℃ぐらいで温度を一定に保っています。低温調理でこの程度の温度誤差は許容範囲と言えるでしょう。 60℃じゃなくて59.5℃に保ってるじゃん、と思いますが、これは温度設定のミス(アナログな目盛り式なので多少ずれる)です。

ローストビーフを作る

低温調理器ができたので実際にローストビーフを作って行こうと思います。(レシピ参考: BONIQ)

  1. 低温調理器を58℃に設定し、牛肉をジップロック的なものに入れ、空気を抜きます。(このパッキングの工程が地味に難しい)
  2. 設定温度になったらパックした牛肉を鍋に入れ、3時間半加熱します。
  3. 加熱が終わったらジップロックに塩を入れ、1時間ほど放置します。
  4. オリーブオイルを強火で熱したフライパンで肉の表面を焼きます。
  5. ジップロックに残っている肉汁と醤油、みりん、酢、ウスターソース等をフライパンで熱し、ソースとします。

完成

完成したローストビーフの写真 いや完璧かい

おいしいローストビーフができました。やったー!

みなさんも低温調理を試してみてはいかがでしょうか。それではさようなら。